離婚協議書は公正証書で

「離婚するなら口約束ではなく協議書にしましょう」「公正証書にしましょう」とよく言われます。

では、離婚協議書とは何なのか、公正証書とは何なのか。
口約束に比べて、どんな効果があるのか?←これが一番重要。
…を、今日はご説明したいと思います。

離婚協議書って何?…言った・言わないを防ぐために

離婚協議書とは何かというと、離婚に関する話し合いで合意した内容を書いておくものです。

口約束だと、後日「言った」「言わない」の問題が生じます。
あるいは、「そんなつもりで言ったんじゃない」「そっちがこう言ったからこうなった」などなど。
夫婦喧嘩の最中によく飛び交うセリフを、離婚後も聞きたくないですよね。
でも…口約束であれば、「言った」「言わない」につながりそうなことは、すぐに予想がつきます。
だって、結婚しているときだって、「そんなつもりでやったんじゃない」ってお互いに言っていたでしょうから。
離婚し、離れて暮らすことになればなおさら、お互いに価値観がずれていき、「そんなつもりじゃなかった」ということになりがちです。
それを避けるために作るのが、離婚協議書です。

こういう条件に合意して離婚したという証拠にするための書類です。

公正証書にせず、ただの離婚協議書にするのであれば、作り方は比較的簡単です。
話し合って、書類を作る。
それだけです。

でも、その内容は、ちょっと面倒です。
「話し合って合意する」のがそもそも面倒な上、「合意した内容をきちんと書く」のも面倒です。

よく離婚協議書に載せるのは、こんな内容です。

  • お互い離婚に合意したこと
  • 慰謝料について
  • 財産分与について
  • 年金分割について
  • 子どもの親権者について(場合によっては、監護権者についても)
  • 養育費について
  • 面会交流について
  • 清算条項

これらを一つ一つ、書いていきます。

最後に日付を書き、お互いに署名して捺印し完了。
2通同じものを作成し、お互いに1通ずつ所有するのが通常です。

公正証書とは

一方、「公正証書」というものは、公証人(法律の専門家)が作成した書類のことです。
私の知る限りでは、元検事さんなどがなられることが多いようで、公務員です。
公正証書は、公文書になります。

そのため公正証書には、高い証拠能力があります。

しかし、離婚の際に作成する公正証書の役割は、「高い証拠能力」だけではありません。
「強制執行できる!」という大きな特徴があります。

通常の協議離婚で、当事者が作成した離婚協議書がある場合。
片方が約束した慰謝料を支払ってくれない!となると、ふつうは、まず裁判になります。
裁判を経て、主張が認められれば強制執行手続きとなるわけです。
ところが公正証書があれば、裁判を経ずに、強制執行となります。

裁判は、お金と時間と手間がかかりますし、さらに気持ちの上の負担も大きいことが多いので、できれば避けたいところです。
公正証書にしておけば、その手間を省けるというわけです。

ちなみに、公正証書は離婚の場合だけではありません。
お金の貸し借りに関する契約書や、最近多い任意後見契約書、遺言公正証書などなど、いろいろなケースで多くの人が公正証書を作成しています。

公正証書にするメリットとデメリット

では、公正証書にするメリットとデメリットは何があるか、考えてみました。

公正証書にするメリット1.証拠能力が高いこと

お互いに作成した「離婚協議書」は、言葉遣いの誤り・不明瞭さ、「お互いに本当に内容を納得して居たのか不明」であることなどが生じがちです。
比較的、偽造しやすいこともあるでしょう。

専門家が作成した離婚協議書は、言葉遣いの誤りなどは無いだろう(少ないだろう)と思いますが、やはり偽造しやすい点があります。

公正証書は、お互いに書類を作成するほかに公証人役場に原本が保管されますし、署名する際に必ず公証人が説明・確認をします。
原本が保管されることから、偽造の心配がありません。
とても証拠能力が高いのです。

公正証書にするメリット2.執行!

いちいち裁判をすることなく、相手の銀行口座や給料等を差し押さえることができる…
これが、公正証書にする魅力です。

もし、公正証書にしていない離婚協議書だったら?
その場合は、まずは証拠を揃えて裁判を起こし、勝訴しなければなりません。
そのうえで、お給料等を差し押さえるわけです。
時間も手間もお金もかかります。
裁判を経る必要が無いというのは、とても大きな魅力です。

特に、「養育費が支払ってもらえない!」といった場合。
「毎月必要なお金なので、とにかく早くほしい」と思っているとき、裁判を経るかどうかで、時間に大きな差が出ます。
それに、経済的に苦しい中で裁判を起こすのは、簡単ではありません。

公正証書にするデメリット1.お金と手間と時間がかかる

公正証書にするには、公証人に手数料を支払うことになります。
その金額は、目的となる財産の価額によると定められています。
良ければリンク先をご確認ください⇒料金表(一番下に手数料について書いてあります)

さらに、手間・時間がかかります。

公証人役場は、役場ですから、平日の昼間に手続きすることになります。
そこへ、当事者が二人とも行かなければなりません。
以前は、代理人が公証人役場へ行き、作成することも認められていたようですが、最近は認めない公証人が増えてきました。

公正証書でどうぞ

このように、お金と手間と時間がかかる公正証書ですが、作成したほうが良さそうだなということがお分かりいただけたと思います。

せっかく書類を作成するのでしたら、ぜひ専門家に相談をして、納得のいく公正証書を作成してください。
なお、専門家に相談する理由等についてはこちらの記事をどうぞ

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