年金分割の具体的なこと

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前の記事では、年金分割制度2つについてご説明しました。
勘違いポイントについても、お分かりいただけたかな、と思います。

さて今度は、実際に手続きする!となったときに、どんなふうに進めるんだろうか…という話です。
具体的なことが分からないと、離婚するに際して、年金分割のことをどう準備したらいいか分からないですからね。
どうぞ参考になさってください。
私個人のお勧めは、年金分割の準備は離婚前から!をお勧めします。
「専門家はすぐに早めの準備を勧めたがる」とお思いにならないで、あとに続く説明をお読みください。
離婚前の準備をお勧めするにはわけがあります。

合意分割

まず、合意分割をどんなふうに進めるのか見ていきます。
合意分割は、当事者2人の合意が必要な制度です。
年金分割そのものを合意するだけではなくて、按分(分割割合)についての合意も必要です。

情報提供

まずは年金事務所(共済組合で手続きするケースもありますがここでは年金事務所で手続きするケースにしぼってご説明します)へ行き、情報提供請求をします。
「年金分割のための情報提供請求をしたい」
といえば、必要書類等も教えてもらえるはずです。

※共済組合の方は、年金事務所ではなく共済組合で手続きします。なお、退職後であれば手続きするところが異なる場合もありますのでご自身でご確認ください。

※協議離婚の場合は、必ずしも必要な書類ではありませんが、話し合いの資料として、あったほうがいいでしょう。調停離婚、審判、裁判等での離婚の場合で、年金分割を求める場合は、提出を求められますので、離婚前に準備したほうがいいでしょう。

この記事を書いている現在(H28/11/1)、必要とされているものは以下のとおり。
でも念のため、年金事務所にご確認ください。

  • 年金分割のための情報提供請求書
  • 夫婦の戸籍謄本(婚姻期間を明らかにできるもの) 原本
  • 国民年金手帳、年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 身分証明書(運転免許証とか…)
  • 印鑑(シャチハタ不可。認印必須)

「年金分割のための情報提供請求書」は、検索すれば日本年金機構のサイトからダウンロード(PDF形式で)できるけれど、説明を見る限りけっこう書き方が難しいです。
年金事務所へ行き、窓口の方から説明を受けながら記入したほうがいいでしょう。
窓口へいけば、白紙をいただけますしね。
上記の必要書類を忘れずにお持ちください。
(出かける前に年金事務所へ電話をして、必要書類を確認するといいでしょう。)

情報提供は、離婚に関する当事者二人のどちらかが年金事務所へ行けば、請求することができます。
離婚前であれば、一方が請求し、一方が単独で受け取ることができます。
(お二人が共同で請求すれば、お二人それぞれに通知されます。)
相手に知られずに請求したいという場合は、離婚前がお勧めです。
また、「年金分割のための情報通知書」の郵送先を指定することもできます。
しかし、離婚後は、一方が請求しても、双方に通知が行ってしまいます。
これは、離婚によって他人になってしまうためと思われます。

請求してしばらくすると、「年金分割のための情報通知書」を受け取ることができます。
数週間から1ヶ月前後、かかることが多いようです。

話し合う、確認する

年金分割のための情報通知書を元に、二人で話し合います。

年金分割をすると、どれだけ受け取ることができるのか、あるいはどれだけ減少するのか。
「年金分割のための情報通知書」を元にご確認ください。

50歳以上、あるいは障害年金を受けている人は、支給見込み額の照会を受け取ることができます。
(これは、情報請求をした人しかできません。自分も照会したい!という場合は、まずご自身で、情報請求手続きをしましょう。)
50歳未満の方で、障害年金受給者ではない方は、照会できませんので、概算で計算することになります。

さて、情報通知書を見ると、按分割合の範囲が書かれてあります。
ここが、情報通知書の大事なチェックポイントその1です。
●●%を超え、50%以下といった記載になっているはずです。
その範囲の中で、割合を決めることになります。

もう1つのチェックポイントは、第1改定者第2改定者という記載です。
それぞれ、ご夫婦のどちらかの名前が記載されているはずです。
第1改定者が年金分割する人(=分ける人)、第2改定者が年金分割される人(=もらう人)です。
妻が第2改定者とは限らないので、要チェックです。

もらう側としては50%が一番多いわけですが、50%以外のケースは、うちの事務所では今までありませんでした。
また、厚生労働省の統計(厚生年金保険・国民年金事業年報 結果の概要 平成26年度)を見ても、合意分割をしたケースの96.4%が50%の割合で分割しています。
ほとんどの人が50%を選択していると言えるでしょう。
なお、上の資料からは、合意分割をしている件数が年々増えていっている様子が分かりますので、あわせて参考にしてみてください。

按分割合を決める(=年金分割のための手続きをする)

さぁ、いよいよ手続きです。
話し合いが終ったら、按分割合を決めます。
年金分割は、手続きしなければ、受け取ることができません。
必ず請求期限内に手続きをしましょう。

やり方は、いろいろな方法があります。
でも、一人で年金事務所へ出向き、「二人で合意した割合なんです!!」と訴えても取り合ってもらえません。
本当に合意した内容であるということを分かってもらう必要があります。
それぞれのやり方にはメリット・デメリットがありますので、以下参考にしてください。

方法1:(離婚前に)離婚に関する公正証書作成または私署証書の認証⇒年金事務所で手続き

当事務所にご相談にいらっしゃる方は、ほぼこの方法をとられます。
メリットとしては、離婚前に年金分割に関する合意を記載した書類を作ることができ、その書類を使えば、離婚後に一人で手続きできること。
離婚前に合意できるというのは、大事な安心材料です。
離婚した後で、「やっぱり分割したくない!」と言われ、協力してもらえない…というリスクを避けることができるのです。

デメリットとしては、公正証書の作成は当事者2人でやらなければならないこと。
また、費用がかかることもデメリットでしょう。

方法2:離婚調停・審判・裁判⇒年金事務所で手続き

離婚調停を申立て、裁判所手動で年金分割について話し合う場合です。
メリットとしては、調停(あるいは審判、裁判)を経て定まったものなので、後日年金事務所で手続きを1人でできること。
いずれにしても調停を申し立てるのであれば、その内容に年金分割を加えても、大して手間ではないかもしれません。
また、調停は調停委員が居る中での話し合いになりますから、比較的スムーズに話が進む可能性もあります。
離婚調停は、実際に離婚する前に申し立てますから、分割する割合について合意した上で離婚できるというのは、大事な安心材料です。
デメリットとしては、時間がかかること(特に年金分割以外に争いが無い場合は…)、お金と手間がかかること(調停はがんばれば一人でもできますが、審判・裁判となると弁護士さんに依頼しないことには…)。

こちらの方法をとられる方で、専門家にご相談なさりたい方は、弁護士さんにご相談くださいね。
必要であれば、当事務所から離婚につよくて話しやすい弁護士さんをご案内もできます。

方法3:離婚後、2人で年金事務所へ行き手続き

特に公的な書類を持たずに手続きするとなると、まずは離婚を成立させた後で、年金事務所へ行き、分割手続きをすることになります。
メリットとしては、お金と手間がかからないこと。
デメリットとしては、離婚が成立した後なので、協力してもらえるかどうか分からないこと。
手続き前に相手がお亡くなりになった場合、手続きできなくなってしまうこと。
年金事務所は話し合いの場ではない(年金事務所で按分について揉めても年金事務所職員が仲介に入ることはありません、当たり前ですが…)こと。

方法4:離婚後、年金分割のための調停(あるいは審判、裁判…)を申し立てる

離婚が成立した後でも、年金分割のための調停を申立てることはできます。
お金と手間がかかりますが、方法3をやってみて、どうしても協力してもらえないのであれば、こうするしかありません。

年金事務所で手続きする

さて、最後に年金事務所へ行き、手続きをします。
離婚公正証書を作成した場合の必要書類は以下のとおりです…が、ケースバイケースということもありますし、必ず年金事務所に確認しましょう。

  • 標準報酬改定請求書
  • 離婚の事実が確認できる戸籍謄本 原本
  • 離婚に関する公正証書
  • 身分証明書(運転免許証とか…)
  • 印鑑(シャチハタ不可。認印必須)

標準報酬改定請求書は、検索すれば日本年金機構のサイトからダウンロード(PDF形式で)できますが、年金事務所で教えてもらいながら書くほうがいいでしょう。
なかなか面倒な書類です。

手続きが終ると、お二人ともに通知書が届きます。

3号分割

3号分割の方は、離婚後に、お一人で手続きすることができます。
合意が必要ありませんから、合意分割の場合とちがって、いろいろな書類が必要ありません。
按分も50%と固定です。

でも、本当に3号分割だけでいいのかどうか…一度、年金分割のための情報提供請求してみてから、考えてもいいかもしれません。
離婚前でしたら、相手に知られずに情報を受け取ることができるのですから。

まとめ

ずいぶん長い説明になってしまいました。
それだけ、年金分割は、複雑で大変な制度なのです。

ご自身で判断しないで、しっかりとした専門家にご相談なさってから判断したほうがいいように思います。

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