経験談のリスク!他人の経験が参考にならない理由
離婚を迷うとき、離婚経験者に相談をする…
よくあるお話です。
「離婚経験がある専門家だから安心」という考え方も、よく聞きます。
でも、当事務所では、自分自身の離婚経験を語ったり、考え方を押し付けたりすることはいたしません。
「離婚経験を教えてほしい」
と頼まれても、原則としてお断りしています。
「経験談」はあくまでも経験談。
一般化するのは難しいと考えているためです。
変な部分を参考にして、ご自身の判断を歪ませてはいけません。
きちんと自分で納得するよう考えて結論を出すべきです。
なぜ、経験談を話さないのか、なぜ経験談を鵜呑みにするのが危険なのか、ここではその理由について説明します。
経験の因果関係に注意!!
私たちは基本的に、経験をもとに世の中を捉えます。
当たり前ですが…誰もが、経験からしか、ものを語ることができません。
とはいえ、「過度な一般化」には、気をつけなければなりません。
例えば…離婚経験者に相談をしたとします。
「どうすれば○○さんみたいに、離婚後幸せに過ごせるんですか?」
「私は毎日××をしたので、円満に離婚できた。だからあなたもこれを真似するべきだ。」
と、勧められたとしましょう。
××は、なんでもいいですが、一見離婚とは関係の無さそうなものです。
でも、××と円満離婚の間の因果関係がどの程度あるかなんて、どうやったら分かるでしょうか?
たかがサンプル数1の事例に過ぎないのに。
それが、誰もに共通する因果関係だと、どうして言えるでしょうか。
こういうことは、意外と多いのです。
「私は××をしたので、子どもが有名大学に合格した」
「私は××をしたので、結婚生活が円満だ」
こういう成功者の体験談、よく聞きますし本にもたくさん出ていますよね。
でも実際に、××と「大学合格」「円満な結婚生活」に因果関係があるかどうかなんて、分からないのです。
もちろん、「きちんと法律に則った手続きをして、書類を作っておいた」「だから、強制執行ができた」というのは、当然のように因果関係が成り立っています。
あとは、「書類を作ったから、こういうときにどうすればいいのか分かりやすかった」というのも、当然、あり得る話です。
ここで説明しているのは、そうではなく……根性論とか、気持ちの問題とか、タイミングとか。
環境によって左右されがちなのに、本当に円満な離婚と関係があるのかどうか、よく分からないけど「なんとなく良さそう」なアドバイスのこと。
具体例:××と円満な結婚生活
実際にお伺いした例です。
「私は毎日きちんと掃除をしたから家に福が来た。夫が昇進した。」
これは本当に、関係があると思いますか?
きちんと掃除するような人だから、「夫」の服装にも気を使っていて、外見が整って見えたから昇進した…かもしれません。
でも、運や占いや風水に頼る場合はともかくとして、普通に考えたら、掃除と昇進の間に関係はありません。
でも、この経験を語っている本人は、大真面目にそう言っているのです。
そして話を聞く人も、その真面目さと勢いに流され、「本当かもしれない」と信じかけている…。
きっと帰宅後掃除するのでしょう。
別に、掃除なんて害が無いからいいじゃないか、という考え方もあります。
しかし、この記事を読んでいるあなたは、離婚という切羽詰った現実に直面しています。
それこそ、掃除している余裕すらありません。
「掃除すれば円満離婚できる」という話は、こうして読むとばかばかしく見えるかもしれませんが、この話を真に迫って信憑性高く語られたとして…あなたは、否定できますか?
離婚未経験で、離婚について不安に思っているところで、そんな話を語られたらどうでしょうか。
離婚の経験には、この手の話が多いのです。
私がここで言いたいのは、「距離を置いてちょっと冷静に考えれば分かる」ということではありません。
経験を語る人は、本当にそれが原因で、良い結果につながったのかなんて分かっていないということです。
でも、その人はそれが真実だと信じ込んでいる。
そして、善意で、あなたを説得しようとしている。
真に迫った話をされる。
これが、経験談を聞くリスクの1つです。
具体例:○○への接し方
今度は、もうちょっと離婚に近い具体例を挙げます。
「私は夫に毎日、離婚してくれと迫ったし、絶対に折れなかったから、うまくいった。諦めないのが大切。」
「私は夫から離婚を迫られたけど、知らぬ顔をして放置していたら、そのうち諦めてもとのサヤに戻った。感謝の気持ちを伝えて、あとは放っておくぐらいでいい。」
どちらも、ありがちな話です。
※どちらとも、実在する例を挙げています。
どちらとも、語る本人は、自信たっぷりに語っているのです。
でも、内容がまるで正反対だと思いませんか?
すごく当たり前のことですが、離婚は、離婚する相手が誰なのか、どういう性格なのかによって違います。
同じ浮気一つとっても、いろいろなシチュエーションがあります。
証拠があるのか無いのか、慰謝料払う資力があるのかどうか、職業的に不倫が発覚するとまずいのか…
細かく挙げればきりがないぐらい、本当に環境が様々。
こどものあるなし、財産、その他いろいろなシチュエーションで、まるで違う様相になるのが離婚です。
失敗談を失敗として語れるか…
第二に。
離婚の経験は、自分を美化して語られがちです。
本当の離婚原因も、状況も分からないのに、「経験談」を語られても参考になりません。
ですが、本当の離婚原因なんて、本当の本当は、誰にも分からないのです。
それこそ当事者同士だって、離婚原因の捕らえ方が双方で違います。
子どもから見た別の「真の離婚原因」が存在することもあります。
関わった当事者すべてが、全ての視点で、微妙にその像が違ってくる…これが、離婚というものです。
それを説明されたところで、参考になりますか?
具体例:離婚原因は?
当事務所が関与した例ではないのですが…
ある人は言いました。
「夫の浮気で離婚した。でも、証拠が無くて、慰謝料はもらわなかった」
事情があって、たまたま、その人の夫から話を聞いてしまいました。
「妻の金銭トラブルで離婚した。危うく連帯保証人にされるところだった」
自称事情通の人が解説してくれました。
「姑がきつい人で、嫁に辛く当たり、嫁はブランド物に狂い買い物しまくり。夫は姑と嫁の板ばさみになって、風俗キャバクラで遊びまくり。」
事情通の人が言うことが正しいとは限りませんが…
正しいとすると、全員が、「自分に責任はない」「被害者」と思っていて、全員がある意味事実を言っているのです。
離婚は、無数の「夫側が言う原因」と「妻側が言う原因」の組み合わせの産物と言えるでしょう。
原因だけを見ても、組みあわせが無数にあるのです。
さらに環境(仕事は?家族は?性格は?経済的には?文化は?宗教は?)もそれぞれ違います。
単に離婚経験者の話といっても、「こうすればうまくいく!」という成功体験をそのまま鵜呑みにするわけにはいかないのです。
自信たっぷりに語られるその経験に、嘘…というよりも見えない事実…があるかもしれません。
まとめ:離婚は自分でよく考えよう
離婚そのものについては、結局のところ、自分で考えるしかありません。
経験談を聞くのはもちろん、いいことです。
でも、「○○したから気が晴れた!」とか、「これでうまくいった!」といった話には要注意。
参考程度に聞いて、鵜呑みにしないで自分でよく考えましょう。
ほんとうにこれ、円満な離婚との因果関係がありそうかなぁ…って。