こんにちは。新潟市の、トマト行政書士事務所の菊地です。

先日、新潟県行政書士会の「AIに勝つ事務所経営」研修を受けてきました。
講師は石下貴大先生です。
石下先生はとっても有名な環境系行政書士の先生。行政書士法人GOALの代表でもいらっしゃいます。

研修はすごく面白かったです。
石下先生による、事務所経営研修。本当に貴重な機会でした。
その日の仕事を全部午前中に詰め込んだ甲斐がありました!

このごろ、新潟県行政書士会の研修に滅多に出ていないのですが、(たまたま)お誘いいただいた業務部の遠藤先生と、開催していただいた業務部の播磨先生には、深く深くお礼申し上げます。
あまりに出不精なものだから、はぐれメタル扱いされつつ、あんまりステキな研修だったのでしっかり懇親会まで出ました。皆様ありがとうございました。

さて。
今日は、この石下先生の研修について書くわけじゃありません。
ここはあくまでも私のブログですので。
(だって、石下先生の経営についてのご意見その他は、石下先生が発信する情報を見れば十分分かりますでしょ?いろいろな手段で発信なさっている先生なので。だいたい、あの素晴らしい研修内容をここに書いちゃったらもったいないですし。)

日ごろ、私生活では万年筆を愛用し、友人とのやりとりは手紙が中心、友人と集まってお茶を飲むときは招待状を出すという19世紀風な私ですが、仕事上はITを活用しております。
ビバIT。
私が一人でスムーズに仕事していられるのは全て、IT技術を活用しているおかげです。
AIが出てきたらもっと便利になったらいいな、なんて、ほのかに思っています。

しかしながら、日ごろから「士業の業務はAIにとって変わられる」だの、「行政書士業務の代替可能性が93.1%」だのと言われています。
93.1という数字はかなり大きいように思えますが…。

今回、研修を受けつつ、AIについてあれこれ思いをめぐらせました。
もともとAIには興味があって、いろいろな記事を見つけてはチェックしてきましたし。
そこで、AIについてもともと調べてあったこと・それを元に考えたことなど、ブログに書く次第です。
いろいろな角度で、AIというものと、行政書士業務、今後の世界について、今の段階で思っていることを書こうと思います。

代替可能性とは、これいかに?

さて。93.1%とは、一体どういう数値なのか。

しばらく前に、ずいぶんセンセーショナルに、「士業はAIに取って代わられる!!」と報道されました。

つい先日発行された「日本行政」(日本行政書士会が発行する月刊誌)でも、同じ数を見かけましたので、ちょこっと確認したところ、「AIやIoTで代替される士業と代替可能な業務範囲の比率」というタイトルで、行政書士93.1%、税理士92.5%……と記載されていました。

約1年前の日経新聞でも同じ数字を見たと申しますか、そちらが、私が最初に見かけたものだったような…そちらも確認してみたところ、「難関とされるサムライ業の多くがAIに代替されかねない」というタイトルで同じ数字が表になっており、表の下には「10~20年後にAIによって自動化できるであろう技術的な可能性」と注釈がありました。

バリバリ理系人間のワタクシとしては、この数値が何に対しての数字なのかが気になってしかたがありません。

数字の大きさは分かります。
しかし、何に関する割合なのかが分かりません。
同じ数字を掲載した記事なのに、片方は「代替可能な業務範囲の比率」となっていて、もう片方は「AIによって自動化できるであろう技術的な可能性」。
同じ数字なのに、意味が違うのですか…?
きっと、記事を書いた人は、そういう数字なんだって理解したのでしょうね。
何に対する可能性なのか。
行政書士の1万種あるといわれる業務の種別に対して、その93.1%という意味なのか。
日経新聞のほうだって、「技術的な可能性」って、何なのか。
どういう意味なのか。

93.1%の行政書士は廃業するということか。
一体何をもってして、「ここからここまでが行政書士業務」としてなされた計算なのか。

ちょっと調べてみました。
まず、分かったこと。
データのソースは、株式会社野村総合研究所と英オックスフォード大学の方との共同研究の結果からきています(表の下のほうに書かれています)。
発表は2015年12月。
記事だけ見ても分からないので、研究結果を見てみましょう。
それによると、士業の業務に限らず、日本のさまざまな労働に対して、計算がなされたようです。

株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:嶋本 正、以下「NRI」)は、英オックスフォード大学のマイケル A. オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士*1との共同研究により、国内601種類の職業*2について、それぞれ人工知能やロボット等で代替される確率を試算しました。この結果、10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られています。

(略)

労働政策研究・研修機構が2012年に公表した「職務構造に関する研究」で分類している、日本国内の601の職業に関する定量分析データを用いて、オズボーン准教授が米国および英国を対象に実施した分析と同様の手法で行い、その結果をNRIがまとめました。それによると、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いと推計されました。

もう、研究結果発表の冒頭に、さらっと書いてあります。
10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られています。
これらの数値は、技術的に、AIやロボット等に代替できるようになる可能性の話とのことです。
ちなみに、私がざざーっとデータを見た中で、一番「代替可能性が高い」職業は、経理事務員で、99.8%でした。

いやいや、ちょっと待て。
経理事務員と一口に言っても、いろんな業務をしている人がおられます。
士業もしかり。
どんな仕事を対象として、あるいは、どんな仕事をするものだという設定で、「技術的な可能性」を割り出しているのでしょうか?

各職業を、どんなふうに「設定」して計算したものなのだろう

さらにもうちょっと見ていきます。
各職業が「どのようなものなのか」については、この、2012年の労働政策研究・研修機構のデータを用いたようです。
では次にこれがどういうものなのかを調べてみましょう。

職務構造に関する研究も、調べたらすぐに出てきました。

本研究では、「Web職務分析システム」により収集してきた2万名以上の実際の就業者のデータを分析することにより、職業を構成する各種次元を検討し、その次元によって職業間の関係を明らかにするとともに、人との関係をデータに基づき確認できるようにした。

2万名以上というと、すごい数ですが、とはいえここで研究された職業は601種。
1種類あたり、33名のデータしか集まっていない計算になります。
ちなみに、各職業の人数がデータとして公表されており、行政書士は男性28名・女性5名のデータを採用しているようです。
弁護士さんは36名、税理士は34名ということでした。

職業興味、価値観、仕事環境、スキル、知識の数値について601職業を分析した。この数値は職業の中核要素といえる職務内容を、職業興味、価値観、仕事環境、スキル、知識から数値尺度化したものであり、職業毎の基準数値が得られたといえる。このような職業に関する数値と、職業毎にどのような職業から移動してくるか、また、どのような職業に移動していくかという職業移動に関して、以下のような様々な検討を行った。

(略)

今回得られた601職業の職業興味6項目、価値観6項目、仕事環境5因子、スキル6因子、知識7因子の計30の数値は職業毎の基準値といえるものであり、これにより職業間の関係をみることができ、多くの職業の中でどのあたりに位置し、それぞれの職業はどの程度近く、また離れているかを知ることができる。

この研究の趣旨としては、「従来、転職活動などをするのに、求人者側の能力や心理傾向を数値化したことはあったけれど、職業側の基準となる価値観やスキル等を数値化してこなかった」ので、数値化したということのようです。
求人者が応募する際に、心理テストを受けて、心理傾向を出すことがあります。
しかしながら一方で、職業側が「こういう心理傾向の人が多いですよ」と提示することは、少ないですよね。
そこで、類似の職業が何なのかを数値で割り出し、転職しやすさにつなげるといった活用を目的とした調査だそうです。

このデータが妥当かどうかは、分かりません。
他に類似のデータが無いのですから。

33人か…

前にも書きましたが、「2万人」というと驚きますけれども、行政書士については33名。
33名か…その中に、どんな仕事をしている人が、多かったのかな?
各先生に、専門分野があります。
どんな専門の先生が、この調査に協力したのでしょう。

ちょっと、肩透かしを食らった感じです。

数字が一人歩きしている印象

結局のところ、この代替可能性というのは、業務範囲は関係なくて、AIやロボット等によってその職業をまるごと代替できるぐらいに技術が発展する可能性のこと
ただしあくまでも技術的な話に過ぎず、技術開発はたぶん可能になるんじゃないかという話であって、社会的・法的・経済的背景等は考慮していません。
(ちなみに、念のために説明しておきますが、技術面をクリアすることは、AI化・ロボット化にあたって、必要条件でしかありません。)

そして、それらの職業については、各職業33名前後からのアンケート結果で想定される、能力等を割り出した数値による、と。

私の印象から言うと、「士業の仕事がAIに代替可能!」という言葉とともに、数字がキャッチーに使われたのかな?といった印象です。
そもそも士業をメインターゲットとして研究されたものではないわけですし。
AIが仕事を奪うぞ!という研究でもありません。
野村総研の研究は、今後の高齢化社会(つまり労働人口が減少する社会)において、どういった職業をロボット化できるのか、どういったところで人員を削減できるのかという視点の研究です。
これによると、日本の全職業の49%がAIやロボットに代替可能だそうです。

信憑性があるのかどうか、分からない

私の結論としては、「93.1に限らず、代替可能性の数字は信憑性があるのかどうか分からないなぁ、いろんな意味で」というところです。

しかしながら問題点もある。一つは客観性の問題である。伝統的な職務分析では訓練を受けた職務分析者が各職場に行き、仕事の様子を観察したり、従業員から聞き取り等を行い評定する。今回のデータは他者により客観的に評価されたものではなく、就業者自らが評定している点でデータに偏りを生じさせている可能性がある。例えば、自らの職務に必要となる要件は客観的な水準よりも高く評定することも考えられる。(略)
また、その職業に就いている人の自らの評定であることは他の職業と比較して評価されたものではないということとなり、職業と職業を並列に評価するような客観性がないということもいえる。

(職務構造に関する研究 第1章より抜粋)

この「職務構造に関する研究」は、その職業に就いている人が、自らの職業についてどう思うかを答えているので、自分の仕事に誇りを持っている人であれば必要な要件をより高く評価しているかもしれないし、逆もしかり。他の仕事についている人との比較評価にはならないということです。
計算の元となるデータがそう言ってるんだから、それを元に研究されたデータについても、同様のことが言えるでしょう。

さらに言うと、あの代替可能性の数値は、技術的な可能性。
実際にAIやロボットを開発して代替するには、コストがかかります。
コストがかかるということは、需要があって、そのコストを払ってくれる顧客層がある程度見込めなければ、代替しないのです。

例えば。
1.4%の代替可能性とされている弁護士ですが、中国では模擬裁判で、AIがベテランの弁護士6人に勝利したというニュースが出ています(2018/8/18)。

【新華社重慶8月18日】中国重慶市渝北区の仙桃国際ビッグデータバレーで16日、法律サービス分野の「人と機械の対戦」が開催され、重慶市が開発した法律ロボット「大牛」が6人のベテラン弁護士に「完勝」した。基本的な法律相談などのサービス提供分野における人工知能(AI)の最新の成果を示した。

私が思うに…いや、中国の状況は分からないのですが……

少なくとも日本では、裁判は公開ですし、その判決は勿論、判決に至った理由、根拠となる法令条文、全て公開されています。
AIは過去の事例を分析することが得意ですし、裁判では通常、過去の判例に則って判決が下されます。
そう考えると、AIが活躍しやすい状況にあるかもしれません。
特に、弁護士報酬は高いですから、AIを開発しコストダウンするだけの価値が十分あると思われます。
AI化は開発コストがかかりますし、AIの特性と扱うデータを考えると維持費もかなりかかりますから、コストをかけるだけのメリットがないと、現実問題としてAIが出てくるのは難しいのではないかな、と。あくまでも上の表は、技術的な代替可能性なのですから。
まぁ、勝手に私が想像しているだけで、実際は分からないのですけど。

結局、間違いなく言えることは、「AI」「ロボット」「その他の技術革新」「電子化等による書類の簡素化」によって、行政書士業務のあり方に何らかの影響があるだろう、一部の業務については業務量が激減するだろうということぐらいです。
でもさらに言うと、行政書士業務だけに限らず、さまざまな業種に、大きな影響があることは間違いありません。
AIが社会に及ぼすインパクトは、産業革命の3000倍とも言われています(この3000という数字も何をどう設定して計算されたのでしょうね?)
とはいえ、単純な「技術的に可能かどうか」という視点だけでは、なんともいえないのが正直なところです。

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