公証人に直接相談して離婚給付契約(公正証書)を作るリスク

こんにちは。
新潟市の<トマトの離婚サポート>トマト行政書士事務所の菊地です。

先日頂いたご相談のケースで、
「もしかして、世の中の人は、公証人について勘違いをしているんじゃ…」
と思ったことがあります。
もしかして、「公証人に相談して作るから公正証書は直接役場へ行けばいい!」と思っていませんか?

今日は、公証人役場へ直接行って、公証人に相談をしながら公正証書を作る場合のリスクについて説明しようと思います。

公証人は法律相談員ではない

公証人の仕事は、「公証」です。国の公証事務を行う公務員が、公証人です。
なんのことやら分かりませんね。

公証って何。
「特定の事実や、法律関係があることを国が証明すること」というと、やや分かりやすくなるでしょうか。
例えば、不動産の登記簿なんかがそうですね。
どこの土地は、どんな目的に使われているものであって、所有権は某のもので、抵当権は誰々のもので…と国が証明しています。
戸籍なんかもそうです。
誰々は誰々の子だとか、妻だとか、証明しています。

それらと同じようなレベルで、「△年○月×日、某と某が金銭***万円の貸し借りをした、連帯保証人は某だ」ということを証明するのが公正証書なわけです。

当然、公正証書は法的に有効でなければなりません。
だから公証人は、非常に高度な法的知識を有する人がなっています。

でも、公証人は法律相談員ではありません。
あくまでも、公証を仕事とする、公務員です。

公証人に相談をすると法的な視点でのやりとりになる

離婚しましょう、ということになって。
「それじゃ公正証書を作成しましょう、士業に頼むと金がかかるし面倒だから直接行けばいいでしょう」
となると、通常は本やインターネットで調べた内容で原案を作成して、公証人役場へ持ち込みます。

「夫婦二人ともこの内容で合意しています」
と言うと、その内容がおかしな部分が無い限りは、公証人が意見をいうことはありません。
必要な資料をそろえて原案を提示すれば、通常はそのままの内容で公正証書になります。

ここでのポイントは、「おかしな部分」です。

公証人が指摘するのは、通常、次の2点です。

  • 法的に問題があるかどうか。
  • 公証人の経験上、実現が難しいと思われること。

2点目を指摘するかどうかは、公証人によります。普通は1点目だけの公証人が多いように思いますが、2点目を指摘する人もいらっしゃいます。

法的に問題があるというのは、例えば離婚の公正証書で、「もう二度と再婚してはならない」なんて買いても、これは有効になりません。そもそも有効にならないとはっきりしているものは、公証人が指摘してくれます。

実現が難しいというのは、例えば、「養育費が月々50万円」なんていうのは、通常のご家庭であればなかなか実現が難しい。夫婦双方が納得しているのであれば、そういう内容で作るけれども、「本当にいいんですか?」と確認する公証人が多いだろうと思います。それじゃ「養育費が月々10万円」だったらどうか。指摘するか、しないかはその公証人によるのではないでしょうか。

あなたが相談したいことは何ですか?

それでは、あなたが「公証人に指摘してもらいたいこと」って何でしょうか。

「行政書士に頼まなくても、公証人だってプロなんだから、ちゃんとしたものを作ってくれるだろう。変だったら指摘してくれるだろう」
と考えて、直接公証人役場へ行って依頼する場合、公証人が何を指摘することを期待しているでしょう?

普通の人が、離婚するにあたって、公正証書を作るときに聞きたいこと(=うちの事務所に相談に来られた方がよくきくこと)って…

  • とりあえず養育費はこの金額で合意したけど、これって多いですか?少な過ぎですか?相場はどのぐらい?
  • こんな内容で、養育費もらおうと考えていますが、よそのご家庭はどうですか。これで問題なさそうですか?
  • こんな内容の離婚公正証書にしたいんだけど、何か問題起こりそうですか?よそのご家庭はどんな内容を入れていますか?

こうしたことを、公証人はこたえません。
そういう仕事じゃないからです。
いや、公証人によっては、こたえてくれるかもしれませんが、少なくともこうしたことを何も言わずに原案出しただけで指摘してもらうのは無理

公証人は、相談員じゃないのです。
気持ちを汲み取った相談は、公証人との間では難しい。
公証人はあくまでも、夫婦が合意した内容が間違いなく存在することを証明するのが仕事です。

うっかり、あなたが知らずに誤った内容の原案を持ち込んでも、公証人が指摘するのは難しいでしょう。
夫婦の合意内容を一から知っているわけではないし、気持ちや事情、背景を確認するわけでもないためです。
そこを勘違いしていると、大事な書類が、思った内容とは違うということになりかねません。

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