もらう人ともらう人が話し合うから揉める

父が亡くなった。
母は既に、数年前に他界。

相続財産は、自宅の土地と建物。
わずかに残った預貯金。
他には何も無い。
遺言書も、無い。

相続人は、子どもA、B、C。

Aは「長男だから」父と同居していた。
何年も、Aの妻が、父の介護をしてきた。

BとCは、近隣に住んで、たまに顔を出す。
介護にも協力をしたし、父が施設に入ったときには、頻繁に顔を出すだけでなく金銭的な協力もした。

よくあるケースだ。
非常によくあるケース。
しかし、すんなりと相続が進むことは、あまり無い。
調停や裁判とまではいかないかもしれないが……相続人の間での話し合いは難航する。

このA、B、Cのケースも、もめた。

Aは「長男だから」当然に自宅は自分のもの、もう何年も住んできたのだからBとCも分かっているだろうと思っていた。
わずかに残った父の預貯金を3等分すればいい……何せ自分が父の面倒をみてきたのだから。
施設に入るときは確かに、多少BとCからも協力してもらったが、わずかなものでしかない。

しかしBとCはそう考えなかった。
BもCも、自力で苦労して自宅を建てた。
Aは苦労なく自宅で暮らしている。
それなのに、施設に入るのに金銭の協力まで求められた。
相応の相続財産をもらわなければ。
それに……父の預貯金がわずかしか残っていないのはおかしい。
Aが使い込んだのではないか。

AとBとCの話し合いは延々と続いた。
それぞれ、もらう側ともらう側が話し合うのだから揉める。
それぞれが、自分がいかに父親に貢献したか主張し続けた。
「長男だ」というAに、「今はそんなの関係ない」「長男だったら施設に入る金も全部払えばよかっただろう、今はそんな時代ではない証拠だ」と主張するBとC。

お金がほしいのもある。
しかし、お金への欲というよりも、自分の貢献を認めてもらいたい気持ちが強い。
相続は褒美だ。
父にそれだけ貢献したという対価であり、親孝行な人間という証だ。

解説「よくあるケースだが揉めるポイントだらけ」

今回のケースは、よくあるケースです。
本当によくあるケースです。

相続人は、子どもが何人かいて、そのうちの1人が親と同居。
相続財産は、自宅とわずかな預貯金で、生命保険は無い。
自宅はそんなに金銭的に高額なものではないから、相続税の申告も必要ではないし、大した相続対策をしていない。

お亡くなりになる方は、「うちはそんなに財産があるわけじゃないから…」と、遺言書を作らなかったのでしょう。
また、同居している子どものほうでも、「自分が同居しているのだから、他のきょうだいは遠慮して財産をほしがらないに違いない」と考えて、遺言書を作るように特にすすめませんでした。

しかし、こういうケースこそ、揉めるポイントだらけです。

なぜ揉めるのか

こういうケースの揉めがちなポイントを整理してみました。

  1. 遺産分割…自宅は住んでいるので分割できない、金銭を分割するだけでは足りない、法定相続分どおりに分けることが難しい
  2. 遺留分…遺留分を無視した遺言書が出てきた場合にもめがち
  3. 寄与分…介護などで「父に貢献した!」⇒「取り分」にプラス?
  4. 特別受益…父の預貯金を使い込み?生前贈与?⇒「取り分」からマイナス?
  5. 相続財産の範囲…家族名義の預貯金も実は父の財産?父の預貯金はどこへいった?何に使った?
  6. 債務…突然出てきた債務は誰が負担?
  7. 葬式費用…誰が負担する?妥当な金額?妥当なグレードの葬儀?戒名が高額(低額)すぎないか?
  8. 祭祀の主宰者…位牌、仏壇、お墓、遺骨の管理は誰?

…と、以上が揉めそうなポイントです。
ここに、感情がからみあってくるので、やっかいな話になります。

例えば、上に書いたような「介護した!貢献した!」と主張している場合。
揉め続けて裁判となれば、具体的に金銭の負担があって、それを証明できればその分が認められるでしょうが、ただ「介護した!面倒をみた!」だけだと、なかなか寄与分としては認められないケースが多いと聞きます。
しかし、感情としては、「面倒をみた」というのは間違いなく貢献です。
介護の専門家でもないのに、自宅で世話をしてきたというのはとても大変な苦労があったと思います。
それでは、その苦労を金銭に換算するとなると…なかなか難しいのではないでしょうか。

こうした、金銭に換算するのが難しいものを抱えた人同士、その代償として相続財産をもらおうとする人同士が分け方を話し合うのだから、揉めるのが当たり前なのです。

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