え…これしか書いてないの?

母が亡くなった。

相続人は、子ども3人。
上から順にA、B、C。
父は既に、数年前になくなっている。

Aは、両親との折り合いが悪くてもう何年も前に家を出、結婚して新居を構えた。
結婚当時は両親を結婚式には呼んだものの、何年も近寄っていなかった。
Bは、父が亡くなった後最初は母と一緒に住んでいたが、そのうちに折り合いが悪くなり家を出た。
一人暮らし。
一年の半分ぐらいは、海外で暮している。
Cは、Bが実家を出た後母から一緒に住んでほしいといわれ、それ以来実家に住んで母の面倒を見ながら暮してきた。
一人暮らし。
結婚を考えたこともあったが、面倒を見なければならない親がついているようでは、なかなか結婚できるものではない。

母が亡くなったので、CはどうにかAとBに連絡をとった。
Aは、Cと仲が悪かったわけではないので、喪主をつとめてくれたしCと協力してくれた。
しかしBは、「母とは仲が悪かったから」といって、葬儀に顔を出そうとしない。
そもそも仕事で、海外に先週行ったばかりらしい。

それでも、そんなに親戚が大勢居るわけでもないごく普通の家だったので、なんとか葬儀は終わった。

やれやれと思っていると、母の遺言書が出てきた。
自筆の遺言書だ。
裁判所で手続きをしてから、遺言書を開いてみると…。

  • 自宅の土地と建物はCにのこす

…とだけ、書かれていた。

「え!!?」
預貯金には一切触れられていなかった。
母は預貯金もかなりあったので、これらについては分け方を話し合わなければならない。
さらに調べたら、株もかなりやっていたようだ。

AとCが、Bに連絡を取ると、Bは「Cがそそのかしてそんな遺言書を書かせたに違いない」と言い出し、預貯金はAとBで分けようと提案。
Aは、「いや。Cはそんなことを言わないだろう」と言い、自分が長く家を空けていたという引け目もあって、3人で分けようじゃないかと提案。
Cは、長年母の面倒をみてきた挙句、勝手なことを言われて面白くない。

そうこうするうちに、母の兄弟たちが、口を挟んできた。
長年ほうっておいたわりに、好き勝手なことを言う。
田舎の風習ゆえなのか、Bからの情報が混じっているのかいないのか、「Cは末っ子のくせに欲張りすぎだ」とCに抗議する。

雰囲気が悪くなってきた。
相続手続きのために、母の財産を調べてみたところ、なんと母が「Cのものにする」と遺言を残してあった不動産が、Bの名義になっていることが分かった。
え?
そういえば、数年前に父の相続のときに話し合ったときに、「母の面倒を見るから」ということで、Bの名義にしたのだったか…。
何せ父の相続のときは、母が専門家の窓口になり、「いいからハンコをつけ」と言われてAもBもCも実印を押した。
内容をよく覚えていない。

「遺言をそそのかしてないことが分かっただろ!!」CはBに怒った。
BはBで、引っ込みがつかなくなり「いや、お前がそそのかしたに違いない!」と言い張る。
「そもそも自宅が俺の名義ならば、Cは出て行け!」
「何を、母さんの面倒なんて全然見なかったくせに!」
母の兄弟は、混乱が面白いのか、あれこれ好き勝手言ってくる。

Aは、BとCの争いが止まらず、口を挟むこともできず、完全に蚊帳の外だ。
あの遺言書がなければ、こんなことにならなかったんじゃないのか。
Cに感謝して何か残したかったなら、ちゃんと調べて書いてくれればよかったのに。
そう思っても、BとCの争いはおさまるところを知らない。

AとBとCは、元々は仲のいいきょうだいだった。
どこで間違ったんだろう。

解説「意味のない遺言書が怖いところ」

今回は、自筆遺言書が残されていたけれど、全然意味がなくて、それをもとにきょうだいが喧嘩した…という内容でした。
今回は分かりやすくするために、遺言書は「自宅の不動産」についてだけ書かれていたけれど、自宅の不動産は他の人の名義だったという内容にしました。
だから、「遺言書書くのにそんなわけないだろう」という突っ込みを入れたくなるかもしれませんが…
実はけっこう、不動産の名義を勘違いしている人や、思い込んでいる人は多いです。

今回の遺言書の残念なポイントは2つ。

  1. 一部の財産についてしか指定がなかった
  2. しかも、母名義の財産ではなかった

一部の財産についてしか、指定がなければ、残りの指定がない財産について、相続人が話し合いをしなければなりません。

また、母名義の財産ではないものについて書いてあることで、相続人が勝手な憶測をし、話がこじれていきました。
これは、けっこうよくあるお話です。
自筆遺言書が、遺言書として必要な条件を満たしていないばっかりに意味が消失し、そこに書かれてあった内容がしこりとして残る……本当によくあります。
しこりがある中で、あらためて相続人どうしで話し合いをすることになりますから、こじれることになりがちです。

ちゃんと調べて正しく書こう

遺言書。せっかく書くなら専門家に相談しよう、と言いたいですが。

どうしても自筆の遺言書にするんだ!専門家にお金を払うのはイヤだ!という場合は、遺言書についてまず何冊か本を読んでください。
たまに、「あれ?」と思うような内容が本に書かれてあることがあります。
何冊か読んで、正しい知識を身につけてください。

そして、間違いなく、条件を満たしてください。

できれば、全部の財産について指定を書いてください。
書かれていない財産があると、話がこじれる原因になるかもしれないので。

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