こうして、士業のホームページを見ると、必ず「離婚するときの条件は書類にしたほうがいい」って書いてありますよね。
「そして、公正証書をお勧めする」

でも、協議離婚だし。
子どもはいない。
だから養育費もない。
慰謝料だの財産分与だのもない。
そもそも、結婚期間中に、とくに預貯金はなかったし借金もしなかったし…

それでも、書類作ったほうがいいの?

…という疑問におこたえします。

そもそも離婚協議書とは?

離婚協議書というのは、そもそも何のために作るのか?…というと。
離婚するときに、離婚の条件について書くことで、「お互いにこういう条件に納得して離婚しますよ」という証拠にするものです。
そうすることで、離婚後にトラブルになるのを防ぎます。
口約束では、言った・言わないの揉め事になってしまいがちです。

離婚協議書を作る目的は、次の3点。

  1. 約束違反(契約不履行)の防止
  2. 齟齬(勘違い、理解の食い違い)の防止
  3. 契約不備の防止

1番と2番は、「言った・言わない」についてでしょう。
3番は、「そんな契約は法律違反」だとか、「そもそも実現不可能な内容だった」といったことを防ぐためです。

実際につくるときは、主に金銭面の内容が多くなります。

  • 子どもの親権は誰が?
  • 養育費は?
  • 財産分与は?
  • 慰謝料は?
  • その他…

…という内容のものが多いでしょう。

ですから、子どもがいない、だから養育費のこともない、財産分与も慰謝料もない……という状況であれば、離婚協議書を作らないという選択肢もあるでしょう。

それでも離婚協議書を作る場合、作ったほうがいい場合

上に書いたとおり、離婚協議書を作らないという選択肢もありますが…
財産分与などがなかったとしても、離婚協議書を作るという選択肢もあります。

どういうことかというと。
離婚協議書は、何も、「財産を支払う」「財産を分ける」だけ書くのではありません。
「お互いにこの財産の分け方で納得したから、これ以上は請求しないよ」という条文を入れることが多いです。
これを清算条項と言います。

慰謝料や、財産分与は、離婚後も一定期間請求することができるのは有名ですよね。
だから、「お互いに納得して円満に離婚…」と思っていたら、ある日、慰謝料の請求書が届くということもあり得るわけです。

そうしたトラブルを無しにするためには、やはり、清算条項を入れて離婚協議書を作ったほうが安心でしょう。
そして、せっかく離婚協議書を作るのであれば、偽造したり有効・無効を裁判で争う羽目になったりするリスクを避けるため、公正証書がいいだろうということになります。

離婚協議書は、普段は活躍しない保険のようなもの

離婚協議書とか、公正証書といったものは、通常、離婚後平和に暮していれば活躍することはありません。
だから、「作ってよかったなぁ」という人は、あまり居ないでしょう。
それだけ離婚後の生活が平穏な証拠です。

離婚協議書や公正証書を「作ってよかったなぁ」という人は、何かあった人です。
「不意に何かが起こったけれど、書類にしてあったので最悪の事態にはならずに済んだ」
となります。

書類なんて、活躍しなければそれに越したことはありません。
「お互いが納得した証拠を残すため」程度であれば、本を読みながら二人で書類にすればいいのです。
たいがいはそれでも十分です。
(ただ、それであれば、別に書類を作らなくてもいいですけれども。)

もし万が一、何か起こったときにそれで十分かどうかは……その場になってみなければ分かりません。
書類の真価が問われるのは、何かが起こってしまったときです。
何かが起こったときに「あのときしっかりした書類にしておけばよかった」「専門家に相談すればよかった」と後悔しても遅いわけです。

つまり、保険のようなものですね。
例えば任意の自動車保険のようなものです。
たいがいは事故を起こしませんから、保険の真価は問われません。
ただ、もし万が一、事故を起こしてしまったときに、真価が問われます…その保険で十分かどうかは、その場になってみなければ分かりません。
何かが起こったときに、「あのときしっかりした保険に入ればよかった」と後悔しても遅いわけです。
逆に、普段、事故さえ起こらなければ、任意の自動車保険なんて入らなくてもいいのです。

自分の運転に自信があっても、自動車保険には入ります。
だって、自分が安全運転をしても、誰かが突っ込んでくるかもしれませんし、そうなると痛手を被りますから。
でも「自動車保険に入っていてよかった」なんてわざわざ言う人はあまり居ません。
わざわざそういう人は、何か事故にあった人です。

離婚協議書もそうですよね。
自分が、離婚後トラブルを起こさない!もう二度と関わりたくない!…と思っても、相手がどう考えているかは分かりません。
相手がトラブルをしかけてくれば、当然痛手を被ります。
あとは、そうなるリスクをどのぐらいと考えるかでしょう。
私だったら、リスクを推し量るのではなくて、書類を作ってしまって少しでも安心したいと思うのですが…。

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